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番号 |
6 |
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HIT |
30553 |
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タイトル |
成人の百日咳 |
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内容 |
百日咳はもともと子供の病気だと思われがちですが、大学での集団発生の話題がマスコミを賑わせたこともあり、成人での感染が近年注目されてきています。成人での長引く咳の原因としての百日咳の関与について、欧米では6〜20%、日本でも10%前後と報告されています。
小児の百日咳は当初普通の風邪のような症状(カタル期)を呈した後に咳が次第にひどくなって(痙咳期)、スタカートと呼ばれる発作性・連続性の咳に加えて犬の遠吠え様と表現される喘鳴(レプリーゼ)が見られます。しかし成人の場合は、三種混合ワクチン接種や以前の感染で免疫が一部ついていると考えられ、小児のような典型的な症状を呈さずに咳だけが長引くことが多く、「病気について」の「長引く咳」項で述べているウイルス感染後咳嗽と区別することがしばしば困難になります。
百日咳の診断には以下の方法があります。
1. 細菌学的検査(Bordet-Gengou培地)
鼻汁を用いて、百日咳菌を培養する方法です。結果判明まで数日間を要しますが、急性感染診断に最も有用です。しかし成人の慢性咳嗽の患者では、感染より時期が経過していること、ワクチン接種により一部免疫が残っていること、抗生物質を投与されていることなどにより、菌の検出が困難な場合がほとんどです。
2. 遺伝子学的検査(PCR法・LAMP法)
鼻汁中の百日咳菌DNAを増幅して検出する方法です。この方法はワクチン接種や抗生物質投与などの影響を受けないため、発症後2週間以上経過した患者では有用であると考えられます。しかしまだ保険適応ではなく、研究施設以外の医療機関での実施は未だ困難な状況です。
3. 血液検査(血清学的診断)
血液検査で百日咳の抗体価を測定し、感染の有無を診断する方法です。日本では、東浜株(ワクチン株)・山口株(流行株)に対する抗体価の測定が広く普及しています。この検査を用いた百日咳の確定診断のためには、病初期と回復期の2週間以上間隔をあけた2回の検査で4倍以上の数値の差を認めることが必要です。しかし現実的には通常の医療機関で期間をあけて2回検査できる頻度は低く、多くの医療機関で1回の血液検査の結果を用いて不確定な診断をしているのが現状です。
呼吸器専門医である当院では、患者さんの強い希望がない限り、以下の理由により成人での百日咳感染の血液検査は実施していません。
1. 1回の血液検査では、確定診断に至らないこと。また成人の場合は長引く咳で来院するため、その時点での抗体価は病初期というよりは回復期に近く、2回の血液検査でも抗体価の差を認めない可能性があること。
2. 長引く咳の時期(痙咳期)には抗生物質の効果はほとんどないため、実際に百日咳だとしても通常のウイルス感染後咳嗽の治療と何ら変わらないこと。
他院で百日咳だと言われた成人の患者さんは、以上のことを参考にしていただければと思います。
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